
日本語には、英語にそのまま訳せない独特の表現があります。
その代表が「居留守(いるす)」です。
僕も昔、NHKの集金が来たときに“いないふり”をしてしまったことがあります。
あの、気まずいけれど仕方ない感じ――まさに「居留守」そのものですよね。
ただ、この「居留守」は英語に完全一致する言葉がありません。
pretend not to be home などの訳はあるものの、日本語が持つ絶妙なニュアンスまでは表しきれません。
この記事では、
- なぜ英語に「居留守」が存在しないのか
- どんな英語表現が最も近いのか
- 日本語特有の文化背景
をコンパクトにまとめて解説します。
Contents
結論|「居留守」に完全一致する英語は存在しない

結論から言うと、「居留守(いるす)」にピッタリ当てはまる英語はありません。
もちろん pretend not to be home や act like you’re not home のような訳は存在しますが、
日本語の“ちょっと気まずいけど、今は出られない…”という独特の空気感までは再現できません。
英語には、
- 相手に対して申し訳なさを含ませるあいまいな表現
- 場の空気で察する文化
があまりなく、状況をはっきり言い表す傾向があります。
一方、日本語の「居留守」は、
- 完全に嘘をついているわけでもない
- かといって堂々と無視しているわけでもない
- その場の関係性や空気を“やんわり保つ”ための行動
…という、非常に日本語的なニュアンスを持っています。
だからこそ英語には、
「居留守」を一言でまとめる便利な表現が存在しない のです。
ただし、英語にも状況を説明する言い方はあります。
シーンに合わせて、より近いフレーズを“選んで使う”必要があります。
まず知っておきたい|英語で“居留守”に近い意味を表す3つの方向性
「居留守」は英語に一語で置き換えられませんが、
英語では“どの方向で説明するか”を決めると、伝え方が一気にわかりやすくなります。
日本語の「居留守」には、
- 本当は家にいる
- けれど今は出られない、出たくない
- 少し気まずさや申し訳なさもある
という独特の空気があります。
英語では、このニュアンスを3つの方向性に分けて表すのがいちばん自然です。
① 行動そのものを説明する方向性(事実ベース)
シンプルに「その行動」を描写するパターンです。
例:
・pretend not to be at home(家にいないふりをする)
・act like you're not home(いないようにふるまう)
英語は、あいまいな空気や「察する表現」が苦手なので、
行動そのものを”ストレート”に言うのが定番です。
② 対応できない理由を説明する方向性(状況ベース)
英語話者は、「なぜ出ないのか」を理由や事情で説明する傾向があります。
例:
・I couldn’t answer the door.(玄関に出られなかった)
・I wasn’t able to come to the door.(玄関に行けなかった)
直接”居留守”を言い表していませんが、
結果として「出なかった」状況を自然に伝えられます。
③気まずさ・申し訳なさを補う方向性(心情ベース)
英語には「申し訳ない空気を一言で包む」文化が少ないため、
心情をあとから添えて補うのが自然です。
例:
・Sorry, I couldn't get the door.(出られなくてごめん)
・I didn't mean to ignore you.(無視するつもりじゃなかった)
英語では”気まずさ”を曖昧にせず、
言葉でハッキリ説明してフォローする文化があります。
3つの方向性を理解するメリット

英語には「居留守」のような便利な一語がない分、
”行動・状況・気持ち”のどこを切り取るかで表現が分かれます。
この3つの方向性を押さえておくと、
次のシーン別フレーズがグッと理解しやすくなります。
シーン別|「居留守」を最も自然に説明できる英語表現
「居留守」は英語には存在しませんが、
状況ごとに“どの部分を切り取って説明するか”で、実はとても自然に伝えられます。
ここでは、実際にありそうなシーン別に英語表現をまとめました。
海外の友人に説明するときや、自分の経験を英語で話すときにも役立ちます。
① 宅配・集金が来たけれど“出たくなかった”場合

日本で最も定番の居留守シーンですよね。
行動そのものを表すと英語でも自然に伝わります。
I pretended not to be at home.
→ 家にいないふりをした。
I acted like I wasn’t home.
→ いないように振る舞った。
I stayed quiet so they’d think I wasn’t home.
→ 気づかれないように、静かにしていた。
少し”人間味”を足すと、より自然になります。
I just didn’t feel like answering the door.
→ どうしても出る気になれなかった。
I wasn’t in the mood to deal with it.
→ 対応する気分じゃなかった。
② 本当は家にいたけど“対応できなかった”場合

英語は事情説明に強いので、この方向性は使いやすいです。
I couldn’t answer the door at that moment.
→ そのとき玄関に出られなかった。
I wasn’t able to come to the door.
→ 玄関まで行けなかった。
I missed the doorbell.
→ インターホンに気づかなかった。
※「気づかなかった」はわりと柔らかい言い換えとして便利
③ 知らない訪問者だったので対応しなかった場合

”警戒する感じ”を含ませたいとき
I didn’t open the door because I didn’t know who it was.
→ 誰かわからなかったから出なかった。
I don’t answer the door when I’m not expecting anyone.
→ 予定がない訪問には基本出ない。
I’m cautious about opening the door to strangers.
→ 知らない人に対しては慎重にしている。
→”居留守”よりも「安全のため」の理由を伝えるイメージ。
④ NHKの集金のように“出にくい理由がある”場合

「出たくないけど申し訳ない」感じのシーン。
I pretended not to be home when the collector came.
→ 集金の人が来たとき、家にいないふりをした。
I didn’t want to deal with it, so I stayed quiet.
→ 対応したくなくて、静かにしていた。
⑤ あとで“気まずさ”をフォローしたい場合

英語では気持ちのフォローを”言葉”で補う文化があるため、この言い方が自然です。
Sorry, I couldn’t get the door earlier.
→ さっき玄関に出られなくてごめん。
I didn’t mean to ignore you.
→ 無視するつもりじゃなかったんだ。
I wasn’t avoiding you. It was just bad timing.
→ 避けていたわけじゃなくて、タイミングが悪かっただけ。
⑥ 自分の行動を“柔らかめ”に言いたい場合(カジュアル)

友達との会話など。
I hid quietly until they left.
→ その人が帰るまで静かに隠れてた。
I pretended not to hear the doorbell.
→ インターホンが聞こえなかったふりをした。
I stayed still so they wouldn't notice me.
→ 気づかれないように動かなかった。
”居留守あるある”を英語で話す時にめっちゃ使えます。
ニュアンスの違いを深掘り|なぜ「居留守」は英語で言いづらいのか
「居留守」を英語に訳そうとすると、どうしても説明的な表現になってしまいます。
その理由は単純に”単語がないから”ではなく、
日本語と英語のコミュニケーションの前提そのものが違うためです。
ここでは、なぜ「居留守」は英語でスッと言えないのか、
その”言語の背景”をやさしく深堀していきます。
① 英語は「行動」を直接表す文化、日本語は“空気を読む”文化
英語は結果や行動をはっきり言い表す傾向が強い言語です。
- I didn’t open the door.(出なかった)
- I pretended not to be home.(いないふりをした)
このように、起きたことをストレートに伝えるのが普通です。
一方、日本語の「居留守」は、
”相手に失礼にならないように”という空気の処理も含んだ概念です。
ただの「出なかった」ではなく、
- 気まずさ
- 申し訳なさ
- でもどうしても出られない
そんな曖昧な気持ちごとまとめて言える言葉です。
この「気持ちまで含めて一語で言える」というところが、英語と大きく違います。
② 英語は「意図」を明確にする文化、日本語は“曖昧さ”を残す文化
英語は、曖昧さよりも”意図”を明確にすることが重視されます。
たとえば
- 無視した?
- 忙しかった?
- 出たくなかった?
こういった”曖昧ゾーン”を一語でごまかす表現はあまりありません。
だから「居留守」という、
”曖昧に状況をやりすごす技術”を表す言葉の存在自体が珍しいのです。
③ “申し訳なさ”を匂わせる一語が英語にはほぼない
「居留守」の裏には、少しの”すみません”の気持ちがあります。
日本語にはこうした感情をワンワードに練り込んだ表現が多いですが、
英語にはあまりありません。
英語の場合:
- Sorry I couldn’t answer.(出られなくてごめん)
- I didn’t mean to ignore you.(無視したわけじゃない)
のように行動+気持ちを組み合わせて説明する必要があります。
つまり、英語は「感情」を短縮しない言語なんです。
④英語には”訪問者との距離感”を表す文化があまりない
日本では、
「誰が来たのかわからないけど、とりあえず静かにしておく」という
”訪問者に対する微妙な距離感”が共有されている文化があります。
一方、英語圏では
- 来客はアポイントメントが基本
- 不意の訪問は少ない
- 不在なら普通に出ないだけ
という前提があるため、
「居留守」という”絶妙な行動”が文化的に生まれにくいと言えます。
まとめ:英語では『行動・状況・気持ち』を分けて説明する必要がある
日本語の「居留守」が一語で成立するのは、文化的背景が支えているからです。
英語では、
- 行動(出なかった)
- 状況(対応できなかった)
- 心情(無視したわけじゃない)
これらを分けて説明して初めて「居留守」に近づきます。
だからこそ、
「居留守」は英語に翻訳しにくい=英語にない概念
と言えるのです。
日本人がやりがちな“不自然な居留守英語”と注意点
「居留守」を英語で説明しようとすると、日本語の感覚のまま直訳してしまい、
実はかなり不自然に聞こえる 表現があります。
① “I pretended I wasn’t there.”|やや幼い・状況がズレて聞こえる
英語では「そこにいる/いない」を直接言うのは子どもっぽく聞こえることがあります。
自然な言い方
・I pretended not to be home.
・I didn’t answer the door on purpose.
② “I ignored them.”|ignore は強すぎる
英語の ignore=完全に無視する という強い意味。
NHKや営業の訪問程度では、かなり冷たい印象になります。
自然な言い方
・I stayed quiet.
・I didn’t answer the door.
③“I hid from them.”|hide は“物陰に隠れる”ニュアンス
大人の「居留守」を説明するには少し大げさ。
自然な言い方
・I kept quiet until they left.
④“I didn’t want to meet them.”|ストレートすぎる
相手への拒絶を強く感じさせてしまいます。
自然な言い方
・It wasn’t a good time.
・I couldn’t answer the door then.
⑤“I pretended not to hear.”|対人では失礼に聞こえる場合がある
「あなたの声をわざと無視した」ような印象になることも。
自然な言い方
・I missed the doorbell.
・I didn’t catch it.
まとめ|“居留守”は英語にないけれど、状況に合わせれば自然に伝えられる

「居留守(いるす)」は、日本語なら一言で通じる便利な表現ですが、
そのまま対応する英語は存在しません。
これは、英語が“行動をはっきり言う文化”、
日本語が“空気や曖昧さを包む文化”を持っているからこそ生まれる違いです。
ただし、英語で伝えられないわけではありません。
この記事で紹介したように、
- 行動を説明する(pretend not to be home)
- 状況を説明する(I couldn’t answer the door)
- 気まずさを補う(Sorry, I couldn’t get the door)
この3つの方向性を状況に合わせて選べば、
日本語の「居留守」にかなり近いニュアンスを英語で表現できます。
また、不自然に聞こえる英語(ignored, hid, didn’t want to meet など)を避ければ、
相手に変な誤解を与えることもありません。
「居留守」は英語にない=英語が不便なのではなく、
伝え方が“ひとつの言葉”ではなく“選ぶスタイル”になるだけ。
むしろこの違いを知ることで、
日本語と英語の価値観の差が見えてきて、
英語での説明力そのものがぐっと上がります。
今日から、あなた自身の「居留守エピソード」も、
英語で自然に語れるはずです。